2009-02-15

PORNSCAPES


ボクは息をのんだ。見慣れているはずなのに。。。一瞬、ジャック・ニコルソンとヘレン・ハントの主演映画「恋愛小説家」の、バスシーンが浮かんでいた。強盗事件の被害を受けたショックから、絶筆にいた、ゲイの画家役グレック・キニアは、偶然ドア影から見えた、バスタブに腰をかけ髪をまとめるヘレン・ハントの裸体に心奪わる。そのシーンだ。左手で湯と戯れる艶やかなS字の姿態。ほの明かりに映えた目映い白肌。素心の女体に魅せられた画家の絵筆は、ひとりでに走り出していた。。。

ルームサービスで食事を終えた後、いつもどおり湯船で四方山つかり愛、すっかり、なごみに潤ったリブは、ひと足先にバスを出た。浅くなった湯船で、ひとりぼんやり至福のいとま。そしてバスルームを出ると。。。ピクチャーウィンドーに広がる夜景のパノラマを前に、湯上りの火照てる余韻を楽しむかのように横たわるテーブルの裸婦。いつの間にか、昨夜の披露宴でいただいた引き出物だったウェッジウッドのキャンドルが灯されている。蝋灯りと街灯りにさらされて、嬉しそうに連なるカーブ。カメラは無心に撮りつづけていた。ボクは初めて女体のヌードを撮っている。いつまでも、うっとりと眺めていたい美景に酔いながら。。。

つーぐらい、マイ・ファニー・ナチュラルさんの、無邪気にはじけるすっぴんの仕業には、いつもドキドキさせられた。いったい次は何が起こるか予測がつかない大自然。この日だって、突然だ。前日、軽井沢のホテルで所属する女優の挙式があって、参列した夜の11時くらいだったか、ハレと酔いに疼いたのか、壊れたのか、甘露な声で来ればーと、電話をかけてきた。電話を切って慌てて新幹線の時刻を調べるも、時すでに遅し。やむなく貫徹明けの始発で軽井沢へ向かった。9時前の朝靄につつまれた肌寒い6月の避暑地。駅からタクシーを飛ばし、森のホテルに着くとほんとに来たっと、徹夜明けは、ぬくもりに抱かれてのしとね。そんな金曜日、八重洲に着いた夕方、なんだかこのまま家に帰りたくないの一言から、ニューオータニに部屋を取ったその夜の話だ。女のすべてを狡猾に意図的に駆使する悪女と、丸裸の素のままに、気の向くままに発露している天然は、まるで違うが、いずれにせよ、それを知りつつ翻弄されるのも男冥利。ふりまわされてなんぼが楽しくなきゃ男はやれない。それも、大自然の予測不能なハプニングの連続は、愉快この上なしと。 もともとじゃれ愛は、たくさんカメラにしまわれていたけれど、メイクラブとは別世界のヌードを虚心に撮れた一瞬だった。アラーキーの気分をちょっと初めて味わった。そんなこんなで実は、非売品ながらB5変形の「RIBSCAPES」という写真集が出てしまった。おかげで隠れヌードフォトグラファー。きゃぁー。でも白状すれは、音楽と国語は最低、されど美系と理系は得意だったせいで理系に行った身の満たされない虫のうずきが、彼女との出会いで目覚めた。絵筆で裸婦を描きつづけて終わりたいと僕はマジなのだ。彫刻や絵画の裸婦像がふくよかであることが、やっとわかる。そんな気になる歳になったのか。それにしても、純心無垢な熟れた大人の乙女にはかなわない。こんな愉快で可笑しいものはない。時に凶暴で、時に凪ぐ、神々しい大自然。理性という厄介な拘束を見事にとろけさせてくれる、女神は最高!

PORNSCAPES Photographer:Pierre Radisic Publisher:GOLIATH BOOKS 2007年初版。 写真はフォトグラファー、ピアーの夫婦間で営まれたラブライフをアーティスト・カップルならではの視線と加工で作品化した、可笑しみと慈しみさえ漂う私小説ポルノアート。アラーキーとも底流でつながる、愛でなりたつふたりの世界。ただ、写真とはいえ官能的ではないので、ふたりの「グラファック」として観ると納得かも。リブいわく、「他人のは観れないけれど、自分たちのは観れるのね」。そう、ビーナスはふくよかじゃなきゃ。

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